EVALUATING JAPAN'S NEW GRAND STRATEGY
日本の戦略
本書は、世界的に権威ある英国国際戦略研究所(IISS)から出版された「Adelphi Series」の一冊であり、日本の安全保障戦略における歴史的転換点を深く分析した画期的な著作です。東京大学の鈴木一人教授から「今日の複雑で急速に変化する国際環境における安定へのロードマップを提供する必読書」と絶賛されるなど、その権威性と社会的評価は極めて高いものがあります。 戦後日本の基本戦略であった「吉田ドクトリン」から、安倍晋三元首相による変革、そして現代に至るまでの日本の戦略的進化を説得力豊かに描き出しています。特に、中国の台頭や米中関係の不確実性といった脅威に対し、日本がより自律的かつ積極的な役割へと移行する様を、防衛、外交、経済安全保障、さらにはサイバー・宇宙技術といった多角的な視点から鮮やかに解き明かします。
著者と関連作品
Robert Ward(ロバート・ウォード)
- 英国国際戦略研究所(IISS)の日本チェアを務め、日本の現代的な安全保障・外交政策に関する独立した研究と執筆を精力的に行っている。
- 地経学・戦略担当ディレクターも兼任し、グローバルな経済ガバナンス、ルール設定、経済的威圧が国家・企業レベルの政策に与える影響など、幅広いテーマを主導。
- IISSに参加する前は、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の編集長を務め、同社の国別・産業分析および予測チームを率いた経歴を持つ。
- 1989年から1996年まで日本に在住し、日本最大の信用格付機関である日本ボンドリサーチ研究所(現・日本格付研究所)での勤務経験もある。
- 英国ケンブリッジ大学で学士号と修士号を取得。
目次(本の設計図)
カードをクリックすると、各章の要約と重要用語が表示されます。
Introduction
日本の大戦略、その歴史的転換点
Chapter One
日本の戦略 コンパスの変遷
Chapter Two
抑止力と対応能力の構築
Chapter Three
安全保障の新たなツール
Chapter Four
構造的な障壁
Conclusion
日本の構造変化と実行能力
牛っと詰まったエピソード
日本の戦略転換を象徴する、注目すべきエピソードをご紹介します。
吉田ドクトリンの終焉
2022年、日本は歴史的な国家安全保障戦略を発表。これは戦後日本の基本方針を大きく転換させるものでした。
台湾有事は日本有事
安倍元首相が提唱したこの言葉は、今や日本の安全保障議論の中心的な概念となっています。
中国ミサイル、日本のEEZに着弾
2022年、台湾近海での軍事演習で起きたこの事件は、日本の脅威認識を劇的に高めました。
「不沈空母」発言の真相
中曽根元首相の有名な発言。その真意と、日米同盟における日本の役割意識の変化を象徴しています。
日米同盟「盾と矛」からの変化
かつて「盾」に徹した日本が、より主体的役割を担うパートナーへと変化していく力学を解説。
経済安保のパイオニア
日本がいかにして経済安全保障という新領域で、世界に先駆けた法整備や政策を進めているか。
安倍晋三の先見性
世界がまだ楽観的だった頃から、中国の脅威を的確に予見し、手を打っていた安倍氏の戦略眼。
日韓、歴史的和解と連携
地政学的脅威を前に、日韓両首脳が政治的資本を投じて関係改善に踏み切った戦略的背景。
「今日のウクライナは明日の東アジア」
岸田首相のこの言葉が示す、欧州とアジアの安全保障の連動性。日本の防衛力強化を加速させた認識。
基礎からわかる牛&A
本書を読む前に知っておきたい、基本的な疑問にお答えします。
Q:「吉田ドクトリン」って何ですか?
戦後日本の基本戦略について、分かりやすく解説します。
Q: なぜ今、日本の防衛戦略が大きく変わっているのですか?
近年の国際情勢の変化と、日本が直面する脅威について解説します。
Q:「反撃能力」を持つと、日本は攻撃的な国になるのですか?
専守防衛との関係を含め、この能力の意味合いを解説します。
Q:「経済安全保障」とは具体的に何ですか?
経済と安全保障が結びつく現代の課題を、具体例を交えて解説します。
Q: 日本の防衛費はこれからどうなるのですか?
防衛費増額の目標と、それが持つ意味について解説します。
Q: 日米同盟はどう変わっていくのですか?
同盟における日本の役割の変化と、今後の展望について解説します。
重要キーワード解説
本書を深く理解するための鍵となる、9つのキーワードを解説します。
地経学
(Geo-economics)
インド太平洋構想
(Free and Open Indo-Pacific - FOIP)
吉田ドクトリン
(Yoshida Doctrine)
反撃能力
(Counter-strike capability)
サプライチェーン
(Supply Chain)
グレーゾーン事態
(Gray-zone situations)
総合的な国力
(Comprehensive National Power)
法の支配
(Rule of Law)
抑止力
(Deterrence)
心が牛っと掴まれた
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🥇
戦後日本の「平和」が、いかに危ういバランスの上に成り立っていたかを痛感させられた。もはや見て見ぬふりはできない現実を突きつけられる。
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🥈
安倍晋三という一人の政治家が、いかに長期的視点で日本の未来を構想し、布石を打っていたかに驚愕した。歴史の評価が覆る一冊かもしれない。
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🥉
「台湾有事」を遠い国の話ではなく、自分たちの生活に直結する喫緊の課題として捉え直すきっかけになった。
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🔹
安全保障というと軍事一辺倒で考えていたが、経済や技術、さらには法や価値観までが現代の「武器」になるという視点に目から鱗が落ちた。
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🔹
複雑な国際情勢と日本の立ち位置が、歴史的文脈から丁寧に解説されており、日々のニュースの裏側にある大きな潮流を理解できた。