本書の概要

本書『帝国図書館──近代日本の「知」の物語』は、2023年に刊行されるや否や、読売、朝日、日経、毎日、産経の主要5紙で書評が掲載されるなど、大きな注目を集めた一冊です。これは、単なる建物の歴史書ではありません。明治・大正・昭和という激動の時代を背景に、国家の威信、思想統制、民衆の知的好奇心、そして戦争の影に翻弄されながらも、日本の「知」を支え続けた国立図書館の壮大な物語です。

物語は、西洋の"Library"概念の受容と、「書籍館」の誕生から始まります。やがて「帝国図書館」として上野にその威容を現しますが、その道のりは予算不足や用地問題との絶え間ない闘いでした。館内では、幸田露伴や夏目漱石といった文豪たちが思索に耽り、樋口一葉が気まずい思いをしながらも知の世界に触れ、後の大物政治家や学者が若き日に閲覧禁止処分を受けるなど、人間味あふれるエピソードが繰り広げられます。

戦後、GHQの専門家の勧告により「国立国会図書館」へと統合され、その役割を終えるまでのドラマは、日本の戦後史そのものを映し出しています。本書は、図書館という窓から近代日本の文化史・思想史を鮮やかに描き出し、私たちが当たり前のように享受している「知のインフラ」の尊さを教えてくれます。現在は「国際子ども図書館」として親しまれるあの美しい建物の、知られざる百年の軌跡を辿る旅へ、あなたを誘います。

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